事実上の移民法?! 改正入管法「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案」が全会一致で可決

旧ブログ記事等

書こうか書くまいか迷ったのですが、一応知っている範囲の事を書きます。

*2018年12月17日追記あり*

マスコミは事実上の移民法って言ってるけど、それは本当?

事実上の移民法!

とか

外国人労働者を安価に雇うことで平均賃金を下げようとしてる!

とか、そういう報道の仕方や受取りをしている方が大変多いのですが、それぞれの要素を一つ一つ切り分けないときちんとした理解はできません。

まず、今回の法案を拙速と言われようとごり押し気味にでも通した最大の目的は

”入国管理庁の早期設立”

この一点だと思ってください。

そしてその目的達成によって得られる最大の国益は、

日本に在留する外国人に対しての出入国の管理、在留状況の管理の詳細化、不法に滞在する外国人の早期発見とその国外退去への強力な執行権の付与

です。
2020年のオリンピックに向けて、海外から流入する外国人(短期滞在含む)の増大への対処の為にもこの部分だけは本当に急いで通さなければならなかった事をまず理解しなければ先に進めません。

 

入国管理庁が外国人管理の為に必要なのはわかったけど、報道で事実上の移民法って聞いて不安なんだけど?

今回のこの改正法案の中身の報道について、特に強調されていて皆さんが不安に思った部分はおそらく、

”政府が指定する”高度人材”の外国人が3年以上日本に滞在すれば無期限の在留許可が得られる。

この部分だと思います。
付随して、

永住許可取得後に両親や家事使用人呼ぶ事、子どもの養育を名目に帯同できる「両親」と「子供」は実の親子関係が無くとも良い

という部分でしょうか。
ここら辺だけを見ると、

高度人材として一旦無期限の在留許可が下りたら、家族どころか親戚縁者を延々と呼び込まれて日本が外国人だらけになってしまう!

といった不安に駆られるかもしれません。

ですが、これについて語る前に、まず現状の日本国内の外国人の在留状況について知っておくべきです。

 

現状の外国人の在留状況って?それが上記法案の理解とどう関係するの?

最近、みなさんがお住まいの地域のコンビニなんかでもネパール人とかベトナム人のスタッフをよく見る様になったと思いませんか?
まだ改正入管法も通っていないのに、そういう光景が増えたと思いません?
どうして外国人が”事実上の移民法”とやらが通る前からこんなにも日本に増えてきているのでしょう?

まず、ここから。

今現在、コンビニ等でよく見るパート、アルバイトの外国人は基本的に全国の日本語学校や大学、専門学校に通う学生が殆どです。

”留学生30万人計画”

という、当時の福田康夫総理が2008年の施策方針演説の中で打ち出したこの話から、同年7月29日に文部科学省が策定した計画が元となって外国人留学生が増えました。

しかし、当時から2012年7月に至るまでこの外国人留学生の存在について明確に規定する法が少なく、整理もされておらず、

・在留管理については、法務省

・学校(勉強)については文科省

・ビザ発給については外務省

の管轄となる上、
当時の時点では、

外国人登録証(今は在留カードです)の発行は、入国した外国人が居住する各市町村の発行

といった有様で、一元管理とは程遠いお粗末なものでした。

そして、各省庁の利害、理解の低さ、いきなり出された方針に何とか対応する為の場当たり的な計画策定によって外国人留学生の在留について曖昧な部分を大きく抱えたままでここまで来ていました。

つまり、この留学生30万人計画策定から10年もの間、外国人が増える土壌だけが出来て、それを取り締まる法律の制定は殆ど進んでこなかったのです。

はい、ここが一番重要な部分。

当時は法律が全然追いついてなかったですし、取締りについても警察だけではとても手が回らない上、外国人に職務質問した時に不法滞在かそうでないのかの判別も難しい状態でした。

例えば、

「夜に外国人が家の周囲をウロウロしていて不安」

という通報があったとしてそれによって駆けつけて職務質問し、外国人登録証を出されたとします。
当時はIDを一元管理できてなかったので、外登証に記載されている在留期限内であれば正規の滞在者と看做すしかなく、外登証の番号を控えて注意だけを行って開放する事しかできませんでした。

実は偽造の外登証で不法に滞在している外国人であったとしても、それを即座に確認する手段も権限もなかったので、それ以上の事が出来なかったのです。

これでは不法滞在者もどんどん増えていく事になりますよね。

では、これに何の対応もしてこなかったのか?というと、

そういうわけではありません。

公布は麻生政権時。
法律としては2012年7月から施行。
それが、

”在留カード”

です。

マイナンバーから見える日本国政府の本気度
2018.11.29:改正入管法が衆院を通過したので非公開を解除しました。 私が知っている事を少し書いてみようかな、と。 マイナンバー制度について。

3年前にマイナンバーの事を書いた記事で少し言及しましたが、おそらくこの

”入国管理庁”

設立までの道筋は、この在留カードが出来た時点からやっとできはじめたものだと思います。

反対したくなる様な話ばかりが強調され、報道もそういった点ばかりで不安になるかもしれませんが、これについては在留カードができる時にも一部界隈から大きな反対が出た事を思い出してもらいたい。
その後日本人に不利益になる事が増えたか?という事も。

特定秘密保護法案の時に騒いだ界隈を思い出してもらってもいいです。

 

しかし、改めて考えたらあの時自民党が下野してなかったら、日本の復活は色々な意味で早かったでしょうし、ホントにギリギリの所でこの在留カードの仕掛けの種だけは植えていたんだなぁ、と。
あ、ここはメルヘンです。

 

それで?外国人が増えた理由と取り締まる入国管理庁が出来るのはわかったけど、移民=外国人がどんどん増える懸念についての説明は?

現状、日本国内に既に多くの外国人が居る状況は理解してもらえたと思います。
その上で、今度の改正法によって更に多くの外国人が増えるのではないか?という懸念があるのでしょう。

ですが、実は

今現在日本に滞在している中長期在留外国人についても、ほぼほぼ永住許可を得ているのに近い状況である

という事は知っていましたか?

今回の法案が通ろうが通るまいが外国人は

”留学生30万人計画”

の元に増え続け、

それによって入国した外国人については在留期限の更新、変更によって特段の不法行為等が認められない限りはず~っと日本に滞在できる

のです。

しかも、両方が日本へ留学している学生である場合に限らず、外国人留学生が結婚して結婚証明がその国から発行されれば、それを提出する事でその外国人配偶者を日本へ招く為の在留許可申請も出来てしまいます。

今までも出来ていましたし、今も出来ています。

例え、大学生の身分でも子供ができて日本で出産すれば日本の健康保険から出産手当が出ますし、子育ての為といえば在留資格を留学生から家族滞在に変更出来てしまいます。

この場合、家族滞在者の在留資格は申請元である外国人留学生の在留許可に紐づきますので、その留学生が日本国内のどこかの企業に就職し、就労の在留許可になればそれを更新する限り家族滞在の配偶者、子供も日本国内に居住し続けられます。

つまり、

今回の改正入管法が通ろうが通るまいが、特に不法でない限り日本に滞在する外国人は勝手に増えていくのです。

ですので、”高度人材”という枠が新しく創設されたとしても、大学生の様な経済的に不安定な身分でも家族滞在を認めてしまう現在よりは、きちんとした経済基盤が日本にある事を前提とする方が不法滞在が増える可能性は低くなると思います。

当然、今までかなり緩く滞在が許されていた外国人についても、これからは審査は厳しくなっていくそうなので、不法外国人が増える懸念については心配いらないと思いますよ。

 

つまり今回の入管法改正についてはいい法律と看做していいの?

そう言い切ってしまいたい所なのですが、正直それはまだ出来ないです。

基本的に入国管理庁が出来る事に絞って考えれば、日本国内に不法に滞在する外国人への適正な処置が早くなり、外国人犯罪の低減に寄与するものとして良い法律だといっていいと思います。

ただ、それ以外の部分については附則部分等をこれから決めていく段階なので何とも言えません。

11月15日にちょっとツイートしましたが

 

特に維新の足立議員が法務省、厚生労働省、総務省に求めた部分については個人的にも早急に対応すべき事案だと思います。

それは、

在留カード=マイナンバー=健康保険証

これらの紐づけです。

現在の健康保険証は国民健康保険証であれば市町村から県単位に管理レベルが上がったものの、国の管理ではありません。
顔写真もないので、健康保険証の貸し借りによる健康保険料の詐取が横行している実態があります。

これについては、民主党政権が1年の滞在期間→3ヶ月の滞在期間へ健康保険の加入要件期間を短くした事に起因するものも多いです。

”外国人の医療観光ツアー”

っていうのを覚えてませんか?
あれって、

”健康保険料を外国人や医師会に貢いで外国人に来てもらいましょう!”

って言ってたのと同じなんですよ。

また、マイナンバーについても旧来の外国人登録証と同じく、居住を開始する市町村で転居届けを出した時点で発行されるシステムになっているので入国時点では在留カードと紐づいていません。

ですが、各市町村発行であった外国人登録証は法務省管轄の在留カードに出来ました。
カード発行も入国と同時にできる様になったわけですから、マイナンバーについてもその在留カードのIDと紐づけて入国時に発行すればいいのです。

出来ない事はないんです。

やるのを渋ってるだけ

ここら辺については維新の足立さんだけでなく、長尾さんや和田さんにも積極的に動いてもらいたい所なんですけどね。

各省庁の岩盤規制を取っ払って、できるだけ早期に上記3つの身分証明を紐づけできるかどうかがこれからの大きな課題の一つだと思います。

外国人研修生や技能実習生についても色々あるんだけど、今回はとりあえずここまで。

 

2018年12月17日追記

健康保険の問題は来年の通常国会で法整備との事。

困った時の菅官房長官凄い!

 

IR関連法案のギャンブル依存症対策の時に

なんで菅官房長官がこれに言及していたかというと、この法案の

「ギャンブル等依存症対策推進本部」

の本部長が内閣官房長官だからです。

ギャンブル規制、引いてはパチンコ規制には割と自分も期待していまして、

といったツイートをした時もそうですが、党内でも色々こじれそうな案件を粛々と進める菅官房長官ホント凄い。

野田聖子がいらんことした5Gの件や携帯会社の寡占による料金の高止まりについても、結局菅さんが取り仕切る事になった様ですし。

健康保険証についても在留カードに即紐付けとはいかないまでも、暫定措置として、来年から健康保険証提示時に顔写真付き身分証の提示(中長期滞在外国人は運転免許証を取らない限り実質在留カードの提示となる)も義務付ける事は決まった様です。

そして、

マイナンバー=健康保険証については2020年を目途に導入する事は大体決まっているのですが、肝心のマイナンバーも通知カードのままでは写真がない、という問題があります。

マイナンバー=健康保険証=在留カードの紐付けはこれからも議論して進めていかなければならないですが、暫定措置が決まった件と、法整備の発言が菅官房長官から出た件は、実にいい事だと思います。

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